自分の会社でAIに任せていること・任せていないことの全部
「AIで事務はどこまでできますか」と聞かれることがあります。
この質問に一般論で答えても、多分役に立ちません。会社によって事務の中身が違うからです。
なので、自分の会社で実際に何を任せていて、何を任せていないかを、全部並べてみます。
任せていないものについては、理由まで書きます。そっちのほうが、多分役に立ちます。
事務歴20年以上で、いまは事務代行を受ける側の会社を経営しています。人を雇う立場でもあり、事務を実際に手を動かしてやる立場でもあります。その両方から見た線引きです。
先に、結論だけ
任せているものと任せていないものを分けている基準は、1つです。
見つけるのはAI。決めるのは人。
数字のズレを見つける、抜けを見つける、下書きを作る。ここはAIが速いです。
そのズレをどう処理するか、この条件で受けるか、この言い方で送るか。ここは人が決めています。
以下、具体的に並べます。
任せていること
1. 記録と、その整理
- 毎朝7時に、前日の作業ログと今日のタスク一覧が自動で作られる
- パソコンで何をしていたかが記録され、あとから時間の内訳が出せる
- 見たもの・保存したものが、あとで探せる形で保管される
朝の分については別で詳しく書いています。
この「記録」が一番最初に効きました。 何にどれだけ時間を使っているか分からないと、どこを渡せるかも決められないので。
2. 会計ソフトに入れるデータの作成
領収書や請求書のPDFから中身を読み取って、会計ソフトに取り込める形に整えるところまで。
ただし、これがそのまま帳簿になるわけではありません。
出てきたものは必ず人が見ます。金額と日付と相手先が合っているか、区分が正しいか。ここを飛ばすと、あとで全部やり直しになります。
3. メールと文書の下書き
- 毎月出す定型のメール(発送の連絡、料金の連絡)の下書き
- 提案書や資料のたたき台
- 議事録の文字起こしと、読める形への整理
下書きまでです。送るのは人です。 ここは後半でもう一度書きます。
4. 名刺や書類の読み取り
紙をスキャンして、一覧表にするところ。手で打ち直していた作業です。
読み取れなかったところは「読めませんでした」と出るようにしてあります。勝手に埋めさせないのが大事で、埋められるとチェックできなくなります。
5. 調べもの
条件を決めて探してくる、要点をまとめる、比較表にする。
出てきたものは疑ってかかります。それらしく書いてあっても、元の情報を見に行くと違うことがあります。
6. 見た目を整える作業
グラフ、図、スライドの体裁。中身を決めるのは人で、整えるのがAIです。
任せていないこと(判断)
ここからが本題です。
1. 会計や税の判断
数字のズレを見つけるのはAIにさせています。そのズレをどう処理するかは、税理士と自分で決めます。
グレーな論点、その年だけの事情、リスクをどう取るか。ここは値段がつくところなので、削る対象ではないと思っています。
2. 価格を決めること
いくらで受けるか。値上げをするかどうか。
材料(かかった時間、相場、他でいくらか)を出させることはあります。でも決めるのは人です。
3. 受けるか、断るか
これは一度も渡していません。
受けたあとに困るかどうかは、金額と時間だけでは決まらないので。相手との関係、自分の余力、他の案件との重なり。ここは説明しきれません。
4. 契約の中身を決めること
範囲、期間、条件。文章の下書きは作らせますが、中身は人が決めます。
5. 人の評価
誰がどれだけやったか、どうだったか。これも渡していません。渡すべきでもないと思っています。
任せていないこと(関係)
判断とは別に、相手のいる仕事は渡していません。
1. 送信
メールもチャットも、下書きまでです。送信ボタンは人が押します。
ここを自動にすると、間違えたときに止められません。 事務の失敗は、たいてい「止められなかったこと」で大きくなります。
2. 謝るとき
ミスが出たときの連絡は、全部自分で書きます。
書き方の問題ではなく、そこを人がやっているかどうかが相手に伝わるからです。
3. 条件を変える相談
値上げ、範囲の見直し、納期の相談。ここも自分で話します。
4. スタッフとのやりとり
指示も、確認も、相談も。ここを効率化しても、多分得るものより失うものが多いです。
情報の扱いは、別に線を引いています
任せる・任せないとは別に、「そもそも入れないもの」を決めてあります。
マイナンバー、口座番号やカード番号、ログイン情報、健康や病気のこと。
理由は1つで、漏れたときに取り返しがつかないからです。
住所や氏名も漏れたら困りますが、後から対処はできます。上の4つはそれができません。
この線引きについては、別の記事で詳しく書きます。
(会社としてのルールは、就業規則や情報の取り扱い規定が先です。個人の判断より、会社で決めておくほうが確実です)
この一覧を、御社に当てはめるなら
そのまま真似できるものではないと思います。うちは事務を受ける側の会社なので、事務の中身が普通の会社と違います。
ただ、分け方は同じように使えます。
紙とペンで、3つの列を書いてみてください。
| 列 | 中身 | 誰がやるか |
|---|---|---|
| 作業 | 手順が決まっている。誰がやっても同じ結果になる | 渡せる |
| 判断 | その場の事情で答えが変わる。理由を説明する必要がある | 人が決める |
| 関係 | 相手がいる。感情が動く | 人がやる |
そして、いま事務の人がやっていることを、この3つに振り分けます。
やってみると、たいてい「作業」の列が思ったより長くなります。
そして、その長い列が1人に乗っているのが、いまの状態です。
「AIに置き換わる」ではない
うちで起きたことは、置き換わりではありませんでした。
任せていない列は、むしろ増えています。作業が減った分、判断に使う時間が増えたからです。
人が減るのではなく、1人が2人分の実行力を持てる、という話に近いです。
そして、任せられなかったことのほうが大事です。そこが残るから、その会社である意味があるので。
明日できること
さっきの3列を、1つの業務だけで試してみてください。
全部を棚卸ししようとすると終わりません。一番時間がかかっている業務を1つ選んで、それだけを作業・判断・関係に分ける。
分けたあとで、「作業」の列に入ったものを見てください。
そこが、いま人がやらなくてもよくなっているところです。
うちでは、この分け方をそのまま研修と導入相談に使っています。何から手をつけるかが決まらないまま、そのままになっている会社が多いので、まずこの3列を一緒に作るところから始めています。
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