合同会社アークス(EARQS) AI事務部のコラム|バックオフィスから始めるAI導入

自分の会社でAIに任せていること・任せていないことの全部

2026-08-30

「AIで事務はどこまでできますか」と聞かれることがあります。

この質問に一般論で答えても、多分役に立ちません。会社によって事務の中身が違うからです。

なので、自分の会社で実際に何を任せていて、何を任せていないかを、全部並べてみます。

任せていないものについては、理由まで書きます。そっちのほうが、多分役に立ちます。

事務歴20年以上で、いまは事務代行を受ける側の会社を経営しています。人を雇う立場でもあり、事務を実際に手を動かしてやる立場でもあります。その両方から見た線引きです。

先に、結論だけ

任せているものと任せていないものを分けている基準は、1つです。

見つけるのはAI。決めるのは人。

数字のズレを見つける、抜けを見つける、下書きを作る。ここはAIが速いです。

そのズレをどう処理するか、この条件で受けるか、この言い方で送るか。ここは人が決めています。

以下、具体的に並べます。

任せていること

1. 記録と、その整理

朝の分については別で詳しく書いています。

この「記録」が一番最初に効きました。 何にどれだけ時間を使っているか分からないと、どこを渡せるかも決められないので。

2. 会計ソフトに入れるデータの作成

領収書や請求書のPDFから中身を読み取って、会計ソフトに取り込める形に整えるところまで。

ただし、これがそのまま帳簿になるわけではありません。

出てきたものは必ず人が見ます。金額と日付と相手先が合っているか、区分が正しいか。ここを飛ばすと、あとで全部やり直しになります。

3. メールと文書の下書き

下書きまでです。送るのは人です。 ここは後半でもう一度書きます。

4. 名刺や書類の読み取り

紙をスキャンして、一覧表にするところ。手で打ち直していた作業です。

読み取れなかったところは「読めませんでした」と出るようにしてあります。勝手に埋めさせないのが大事で、埋められるとチェックできなくなります。

5. 調べもの

条件を決めて探してくる、要点をまとめる、比較表にする。

出てきたものは疑ってかかります。それらしく書いてあっても、元の情報を見に行くと違うことがあります。

6. 見た目を整える作業

グラフ、図、スライドの体裁。中身を決めるのは人で、整えるのがAIです。

任せていないこと(判断)

ここからが本題です。

1. 会計や税の判断

数字のズレを見つけるのはAIにさせています。そのズレをどう処理するかは、税理士と自分で決めます。

グレーな論点、その年だけの事情、リスクをどう取るか。ここは値段がつくところなので、削る対象ではないと思っています。

2. 価格を決めること

いくらで受けるか。値上げをするかどうか。

材料(かかった時間、相場、他でいくらか)を出させることはあります。でも決めるのは人です。

3. 受けるか、断るか

これは一度も渡していません。

受けたあとに困るかどうかは、金額と時間だけでは決まらないので。相手との関係、自分の余力、他の案件との重なり。ここは説明しきれません。

4. 契約の中身を決めること

範囲、期間、条件。文章の下書きは作らせますが、中身は人が決めます。

5. 人の評価

誰がどれだけやったか、どうだったか。これも渡していません。渡すべきでもないと思っています。

任せていないこと(関係)

判断とは別に、相手のいる仕事は渡していません。

1. 送信

メールもチャットも、下書きまでです。送信ボタンは人が押します。

ここを自動にすると、間違えたときに止められません。 事務の失敗は、たいてい「止められなかったこと」で大きくなります。

2. 謝るとき

ミスが出たときの連絡は、全部自分で書きます。

書き方の問題ではなく、そこを人がやっているかどうかが相手に伝わるからです。

3. 条件を変える相談

値上げ、範囲の見直し、納期の相談。ここも自分で話します。

4. スタッフとのやりとり

指示も、確認も、相談も。ここを効率化しても、多分得るものより失うものが多いです。

情報の扱いは、別に線を引いています

任せる・任せないとは別に、「そもそも入れないもの」を決めてあります。

マイナンバー、口座番号やカード番号、ログイン情報、健康や病気のこと。

理由は1つで、漏れたときに取り返しがつかないからです。

住所や氏名も漏れたら困りますが、後から対処はできます。上の4つはそれができません。

この線引きについては、別の記事で詳しく書きます。

(会社としてのルールは、就業規則や情報の取り扱い規定が先です。個人の判断より、会社で決めておくほうが確実です)

この一覧を、御社に当てはめるなら

そのまま真似できるものではないと思います。うちは事務を受ける側の会社なので、事務の中身が普通の会社と違います。

ただ、分け方は同じように使えます。

紙とペンで、3つの列を書いてみてください。

列中身誰がやるか
作業手順が決まっている。誰がやっても同じ結果になる渡せる
判断その場の事情で答えが変わる。理由を説明する必要がある人が決める
関係相手がいる。感情が動く人がやる

そして、いま事務の人がやっていることを、この3つに振り分けます。

やってみると、たいてい「作業」の列が思ったより長くなります。

そして、その長い列が1人に乗っているのが、いまの状態です。

「AIに置き換わる」ではない

うちで起きたことは、置き換わりではありませんでした。

任せていない列は、むしろ増えています。作業が減った分、判断に使う時間が増えたからです。

人が減るのではなく、1人が2人分の実行力を持てる、という話に近いです。

そして、任せられなかったことのほうが大事です。そこが残るから、その会社である意味があるので。

明日できること

さっきの3列を、1つの業務だけで試してみてください。

全部を棚卸ししようとすると終わりません。一番時間がかかっている業務を1つ選んで、それだけを作業・判断・関係に分ける。

分けたあとで、「作業」の列に入ったものを見てください。

そこが、いま人がやらなくてもよくなっているところです。


うちでは、この分け方をそのまま研修と導入相談に使っています。何から手をつけるかが決まらないまま、そのままになっている会社が多いので、まずこの3列を一緒に作るところから始めています。

横浜はるか

この記事を書いた人

横浜はるか合同会社アークス 代表

事務歴20年以上。バックオフィス業務の改善と事務・経理代行の会社を経営しながら、企業向けAI研修や個人向けAI講座の講師もしています。自社の事務も、AIを使いながら日々整えています。

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